給与のデジタルマネー払いとは?企業・従業員のメリット・デメリット

こんにちは、キッズ・マネー・ステーション認定講師で、ファイナンシャルプランナーの伊藤江里子です。

多くの企業が「給料日」としている日のお昼頃、銀行のATMには長い行列ができているのを見かけます。
「ATMで並ぶ時間がもったいない」「口座から出金する際の手数料を節約したい」という理由で、多めに現金を払い戻す、あるいは現金を使わない(キャッシュレスを利用)といった工夫をされている方も多いと思います。

現在、給与は、従業員本人名義の銀行口座に振込という形で支給されるのが当たり前になっていますが、昭和50年代までは現金による支給が主流で、給料日は封筒に1か月分の現金を受け取っていたので、お給料を待つ家族としては現在よりも現金の重みを実感していたのではないでしょうか。

これは、昭和22年に施行された「労働基準法第24条」で賃金の支払いを、「通貨で直接従業員に全額払う」「毎月1回以上、一定期日に払う」と決めていたからです。

現金支給の場合、給料日は会社の経理担当者が、従業員1人1人の給料を準備して受け渡しする負担もあり、受け取った従業員も落とさないよう盗られないよう緊張する日だったと思います。

昭和43年12月にボーナスとして支給される3億円の現金が輸送途中に奪われるという事件が起きたことや、銀行の自動預金支払機(CD)が普及し始めたことにより、従業員の同意を得ること(労働基準法施行規則第7条の2)により、昭和40年代半ばから給与は銀行・証券総合口座へ振込する形に変化していきました。

そして現在、デジタル化を推進する政府が、給与にもデジタルマネーを解禁しようと検討しています。今回は「給与のデジタルマネー払い」について、どんなものか、企業側・従業員側のメリットとデメリット、これからの課題についてご紹介します。

「給与のデジタルマネー払い」とその背景

現在、行政のサービスを含め社会全体としてデジタル化を推進する中で、経済産業省も現金以外の決済手段(キャッシュレス)を進めてきました。

「現金決済」には、硬貨や紙幣の製造費用、日本銀行から各金融機関への輸送費、ATMの設置・管理(現金補充など)にかかる費用、警備にかかる費用など、1年間に約1.6兆円を超えるコストが発生していることもキャッシュレス化を推進する理由の1つです。

(出典)経済産業省「キャッシュレスに関する説明資料等」、「キャッシュレスの現状及び意義

そして、ポイント還元事業、コロナ禍においての通信販売業者利用などにより、日本国内におけるキャッシュレス決済比率は徐々に普及しています。

しかし、海外と比較してみると、まだ高いとは言えないのが現状です。

キャッシュレス決済は、支払いが発生するタイミングで次の通り3つに分けることができます。

1.電子マネー・コード決済…前払い(利用金額を前もってチャージ)

Pay Pay・LINE Pay、スイカ・イコカなど交通系ICカード、WAON・nanacoなど流通系電子マネー

2.デビットカード…即時払い(利用した際、即時に銀行口座から利用金額を引き落とし)

銀行・ゆうちょ、VISA・JCBなどが取り扱っています。

3.クレジットカード…後払い(利用時はカード会社が立て替えて、後で銀行口座から引き落とし)

VISA,JCB、Mastercard、American Expressなど

給与のデジタルマネー払いに利用され始めているのが『電子マネー・コード決済』です。
電子マネーは、現金・銀行口座残高から前もってチャージし、利用者は給与が振り込まれた銀行口座から現金を出金したり、口座残高からデジタルマネーに振替をしています。

給与がデジタルマネーという形で直接受け取れるようになれば、こう言った手間を省けるだけでなく、キャッシュレス決済も更に進むだろうという狙いがあるのです。

企業・従業員のメリット

・労働基準法24条で「給与は直接従業員に払う」と決められていますので、企業側が負担している振込手数料を軽減でき、「週払い」「日払い」もしやすくなります。
(法人が従業員の口座に給与振り込みする際の手数料金額は、取引状況などによって銀行が個別対応をしているので、軽減効果に差があります。)

・従業員は、銀行や証券会社の口座以外に自分のライフスタイルに合った給与受け取りの選択肢が増えます。また、企業側も、従業員の多様な希望に対応できることで、幅広い人材の確保につながります。

また、実はそもそも、デジタル給与払いは“ある理由”で2015年から議論が持ち上がっていました。それは、外国人労働者が日本の銀行口座を開設することに時間や労力がかかること。これを解消できれば、日本で働くことへのハードルが下がり、企業にとっても人事部の負担軽減になります。

企業・従業員のデメリット

・従業員側のデメリットとして、住宅ローンや公共料金の引き落としなど、銀行口座を利用しているサービスがあれば、銀行の預金残高を別途管理する必要があります。

現在のところ、電子マネーから直接現金で出金することができない(手数料を負担して、銀行口座に入金する方法で払い戻す)ので、現金が必要な場合は費用と時間がかかります。

・「Pay Pay」「LINE Pay」など決済サービスを提供する事業者は「資金移動業者」といわれ、要件さえ満たせば登録でき(許可制ではない)、利用者の資金を全額保全する義務があります。しかしながら業者が破綻した場合や第三者による不正利用があった場合、労働基準法第24条の賃金支払いを履行できない責任を企業側は問われるリスクがあります。

(出典)一般社団法人日本資金決済業協会HP

これからの課題

労働基準法で給与は現金支給と定めており、従業員の同意により「銀行・証券総合口座」への振り込み支給を認められていますので、「資金移動業者の提供するサービス」も加えられるよう、まずは法整備が必要です。また、政府も「成長戦略フォローアップ」(2020年7月17日閣議決定)等において、早期の制度化を目指しています。

その前提として従業員保護の観点から、資金移動業者については「安全性」「資金保全」「補償性」の面で銀行と同等であることを求めています。

(出典)厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払について」、「資金移動業者の口座への賃金支払について 課題の整理」、「成長戦略フォローアップ」(2020年7月17日閣議決定 P116)

不正な引出しをされた場合、銀行口座は「預金者保護法」によって利用者に過失がなければ全額保護の対象ですが、資金移動業者の場合、業者ごとの個別の約款(ルール)によります。
各業者でセキュリティ対策を強化するだけでなく、法律による共通の保護があると、私たちも安心してキャッシュレス決済を利用できますね。

また、今の世の中、預金をしても利子がほとんどつかないですよね。その様な状況下において、賢くキャッシュレス決済を利用することで『ポイントが得られる』のは魅力的な恩恵。前述のセキュリティ面や法整備が確立されれば、積極的に活用してみるのも有りかと思います。

政府はできるだけ早い時期に、給与の受け取り方を「現金、銀行・証券総合口座」に加えて「デジタルマネー」も解禁しようと進めています。
選択肢が増えることは嬉しいことですが、何よりキャッシュレス決済がさらに安全・安心・便利になることを期待したいですね。

執筆者:伊藤江里子(いとうえりこ)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー
銀行、生命保険・損害保険会社で営業経験があり、現在は独立系FPとしての相談業務や講座などを通じて、上手なお金の使い方を「自分で選べる」「自分で決められる」よう応援しています。
https://fp-okaeri.com/

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